代弁人
病院に何度か入院している夫は個室より大部屋がいいという。よほどの重症ならしかたないけれど、寂しいのだそうだ。私も3年前、目の手術で感染症にかかり個室隔離となって2週間以上をそこで過ごしたが、看護士さんが時間通り訪問してくれるほか、し・・・んとした時間が過ぎてゆくだけで、聴きたいCDもたくさん持っていったのに、なんとなく、聴く気になれなかった。少しよくなってからは、窓から見える景色を片目でスケッチしたりして時間を過ごしたが、確かに退屈だった。
今、夫の病室は6人部屋だ。外科病棟なので、老若入り混じり、向かいの人は糖尿病で左足を膝から切断した30代男性、バイクに乗りたいという夢が実現しようとしたときに、病が発覚したのだそうだ。斜め向かいは椎間板ヘルニア、これも若い男性だ。膝の手術をしたシニアもいる。みんな検査中は会話も弾むが、手術日、その翌日に病室に戻ってきたときは、カーテンを引いてうん、うんうなっている。聞いていても苦しくなり、気の毒な状態だ。とても痛みがひどいときは痛み止めの座薬を入れてもらったり、注射をしてもらったりするのだが、それでもとても痛いそうだ。しかし、大人はだまって痛みをこらえるしかない。
そんな部屋に10歳くらいの少年が入ってきた。彼はドッジボールをしていて、友人とはげしくぶつかり、肘を複雑骨折して、手術を受けたのだ。その夜は病室で過ごすことになった。少年はあまりの痛みに声をあげて泣き叫んでいたそうだ。
「痛いよう!!!麻酔なんてちっとも効かないじゃないかあ!!!麻酔で痛くなくなるなんて、うそじゃないかあ・・。ああ、もう我慢できない~~痛いよう!!!」
夜中近くまで泣いていたので、医師がきて筋肉注射をし、やっと眠りについたそうだ。でも、この少年は看護士さんが訪ねてきて処置をしてもらうたびに、「ありがとうございます!」とお礼を言っていたそうだ。
少年は、翌日退院して行ったけれど、病室の大人たちはそれがちょっと寂しかったようだ。自分の言いたい言葉をかわりに声高く言ってくれた少年・・・・。


















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