2009・9・23
数日前、「この人にときめき!」で松たか子さんが出ておられ、このミュージカル「ジェーン・エア」の舞台稽古が紹介されたので、とても楽しみにしていた。シャーロットのこの小説とエミリーの「嵐が丘」は私が青春時代に読んだ作品の中でもとりわけ印象深く、まだ見ぬイギリスの荒野への憧憬をふくらませてくれたものだ。そしてとうとうその場所に立つことができたときは、感動で胸がふるえた。見渡す限りヒースの茂る草地にヒュルヒュルと音をたてて吹く風・・・・たった150年前にあの壮大な物語を生み出したブロンテ姉妹がここを歩いていたのだ・・・と。
劇場にはいると舞台はあのムーアの風景だった。始終吹きすさぶ強い風に枝が一方に曲がった木々が遠景にたくさんならんでいた。右手が高い丘になっていてそれは空につながっている。「レ・ミゼラブル」のジョン・ケアードさん(イギリス人)が演出する舞台だ。
物語は両親を亡くしたジェーン・エアは、劣悪な環境の寄宿学校に預けられ、教師の虐待に遭いながらも、親友エレンに励まされ、自立の志を持った強い女性に成長する。やがて教師の資格を得て、地方の富豪の家に家庭教師として赴任するが、謎めいた挙動の不思議な人物である主人ロチェスターに惹かれていく。ロチェスターも財産めあてに近寄る貴族の娘もいたが、自分の考えをしっかり主張し、夢にむかってひたすらに生きるジェーンに惹かれていく。二人が結婚を誓ったそのとき、ロチェスターには昔騙されて結婚させられた狂人の妻がいることがわかる・・・つづく。
「ジェーン・エア」はシャーロット・ブロンテが31歳だった1847年にカラー・ベルという男性名で出版された。前年に出された3姉妹の詩集は2部しか売れなかったが、「ジェーン・エア」は当時の社会では考えられない社会批判をする女主人公が話題となり反響を呼んだ。
小説に出てくる人物、出来事、環境はほとんどシャーロット・Bの体験と重なる。姉二人を死に至らせ、シャーロットとエミリーも体験した劣悪な学校、ベルギーの留学先での恋愛体験、そして何よりもブロンテ姉妹の自立心の強い主体的な生き方・・・・。
松たか子さんは、そんな意志の強いしっかり者の主人公をよく演じていた。清潔なイメージの中に女性らしい香りもするヒロインの魅力(小説では美人でないというように書かれているが、松さんは美人!肖像画によるとシャーロットも美しい女性だったようだ)を感じさせるし、歌唱力もあり、声量もある。表現面では、まだちょっとワンパターンなイメージも残っているけれど・・・。またロチェスターを演じた橋本さとしさんは、とてもすてきな男性だった。
昔、小説で読んだときは、あまり気づかなかったが、「ジェーン・エア」はけっこうドラマチックな展開でこうした舞台で上演するのにとてもいい作品なのだ・・・と思えた。
「嵐が丘」のように複雑な二重構造の構成になっていると、ちょっと舞台では難しいかもしれない。(映画は何本も作られているが)
しかし、このブロンテ姉妹の作品を支えているもう一つの柱は、ヨークシャーの自然の魅力だ。この荒涼としたしかし強い生命力に満ちた自然の中でロチェスターもヒースクリフも不思議な魅力をかもし出す。もちろんジェーンもキャサリンもだ。ただこれは舞台では伝わりにくいかも知れない。
舞台が終わった・・・拍手がなりやまない。俳優さんたちの熱演が心に残るミュージカルだった。
オペラ歌手の幸田浩子さん、ベテランの寿ひずるさん、そしてジェーンの少女時代を演じた子役たちもすばらしかった。
エミリー・ブロンテ
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